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当科では大動脈疾患を中心に、末梢血管疾患から静脈疾患まで 血管に関するあらゆる疾患に対して外科治療を行っています。

ステントグラフト

1.胸部大動脈に対するステントグラフト治療

胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療は、従来の人工血管置換術に比べ、開胸操作が必要ない、人工心肺が必要ない、手術時間が非常に短いなど、体にかかる負担が格段に少ない手術です。すべての胸部大動脈瘤を治療することはできませんが、年々、技術の進歩とデバイスの進歩が進んでいるために、いままで難しいと思われていた動脈瘤に対する治療も可能となり、対象症例も拡大しています。

重篤な合併症としては、脊髄を栄養する血管を閉塞させるために、人工血管置換術と同様に、対麻痺などの脊髄障害が問題となる場合があります。の発生率は約3%です。

遠位弓部大動脈瘤に対するステントグラフト

遠位弓部大動脈瘤に対するステントグラフト

胸部下行大動脈瘤に対するステントグラフト

胸部下行大動脈瘤に対するステントグラフト

解離性大動脈瘤に対するステントグラフト

解離性大動脈瘤に対するステントグラフト

合併症

術前

合併症

術後

2.腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療も、従来の開腹での手術に比較しますと,非常に負担が少ない手術です.従来の開腹による人工血管置換術も現在は非常に安全な手術となっておりますが,いろいろな病気が原因で開腹手術に耐えられない患者さんもいらっしゃいます。ステントグラフト治療はそういった患者さんにとっては、非常に有用な治療法です。当院ではステントグラフトも基本的には全身麻酔で行っていますが、局所麻酔や腰椎麻酔で施行することも可能です。手術の際は開腹せずに両足の付け根を数センチ切開して、そこから血管の中にステントグラフトを挿入します。手術時間は1~2時間ほどで、手術の翌日から食事ができ、術後1週間程度で退院が可能です。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト

3.ステントグラフト治療の問題点

体への負担の少ないステントグラフト治療ですが、特有の問題点があります。
一つ目が、ステントグラフトで補強したはずの腹部大動脈瘤に、血液がもれることで、これをエンドリークといいます。それぞれ図のように4つのタイプに分類されています。

エンドリーク

エンドリークは時に瘤の拡大や破裂の原因になる場合があります。厄介なのは、手術直後はエンドリークがない場合でも、時間がたって出現する場合があることです。ですから定期的な検査(CTやエコー検査)が不可欠になります。一般的にはエンドリークのタイプ別でいうと、タイプIとタイプIIIは瘤拡大や破裂の原因となりやすいので治療をした方がいいといわれています。

治療法はステントグラフトの追加や血管内治療で対応できる場合もありますが、人工血管置換術を行わなければならない場合もあります。ステントグラフト手術術後人工血管置換術を行う場合は、従来の腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術と比べ手術は格段に難しくなります。

二つ目が腹部大動脈瘤と十二指腸がくっついて穴が開いて交通してしまう大動脈十二指腸瘻というものです。非常に稀な病態ですが、発病すると腸内細菌が動脈瘤に入り込んでステントグラフトが感染してしまいますので、そのままでは感染症や大動脈瘤破裂を引き起こし死亡してしまう非常に重篤な疾患です。原因ははっきりとはわかっていませんが、ステントグラフト治療後に大動脈瘤がエンドリークなどで拡大する場合に発病する報告も見られますが、順調に縮小していた動脈瘤に発病する症例も当院では経験しています。

三つ目はステントグラフトの変位です。ステントグラフトは治療の時の患者様の動脈瘤を計測し、その形に合ったものを使用します。しかし、年齢を重ね体格が少しずつ変わるように、大動脈瘤の形や太さも少しずつ変わりますので、ステントグラフトが合わなくなり、変位することがあります。そのため、ステントグラフト内挿術後には定期的なCT検査がとても重要となります。

ステントバルブ

ステントバルブ(TAVI)とは大動脈弁狭窄症に対する新しい治療法です。2002年に世界で初めて行われた治療法で、日本で開始されたのは2013年からと、非常に新しい治療法となっております。現在北海道でこの治療が受けられるのは、当施設を含めて2施設(2016年現在)のみとなっております。

ステントバルブ(TAVI)は、ご高齢や体力の低下などから、従来の人工弁置換術が受けられなかった患者さんでも大動脈弁狭窄症の手術が受けられる画期的な手術法です。

その理由は手術の大部分の過程を血管内で行うためです。手術に際しては太ももの付け根に7cmほどの切開を置くだけで施行可能です。

しかしながら、新しい治療法であるため、長期的な安定性が不明であり、また、全ての患者さんに行えるわけではありません。

治療希望の患者さんにおきましては、まずは主治医の先生とご相談頂き、その後、当院での検査を受けて頂いた後に手術可能かどうかの結論をお伝えしております。

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大動脈弁置換術

大動脈弁とは、心臓のポンプである左心室の出口にある弁です。この弁が石灰化やリウマチ熱などにより可動不全に陥ると大動脈弁狭窄症に至ります。また、逆に大動脈弁の周りの組織が拡大すると大動脈弁が閉鎖しきれなくなり、弁に逆流を生じる大動脈弁閉鎖不全症に至ります。

どちらの疾患も、重症の場合、開胸による手術が必要になります。手術の場合、パイロラティックカーボン製の機械弁か牛や豚の心膜から作成した人工弁を移植することが一般的です。

大動脈弁03

機械弁の特徴はその耐久性で、一度移植すれば、ほとんどの場合一生涯弁の機能を発揮することが報告されておりますが、ワーファリンという抗凝固作用(血液をサラサラにする)のある薬剤を一生内服する必要があります。また、定期的な血液検査も必要となります。

一方、生体弁は耐久性に問題がありますが(一般的に15年前後で再置換が必要)、ワーファリンの内服を術後3か月程度でやめることができます。

当科では、65歳以上の患者さんには生体弁を、それ以下の年齢の患者さんには機械弁を推奨しております。

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僧帽弁形成術

僧帽弁形成術は、ご自身の弁尖と弁輪を利用して僧帽弁を形成し,逆流を改善する手術です。人工弁を使用しないため,長期間の抗凝固薬の内服を避けることができます。ただし、心房細動等の不整脈を合併している場合はこれにあてはまりません。

僧帽弁形成術は、心臓形態維持に優れ、術後心機能も良好に維持できることから、僧帽弁置換術と比較して予後の改善にもつながるとされています。そのため,可能であれば弁形成術の方が望ましい術式と言えます。当科でも僧帽弁閉鎖不全症に対しては、弁形成術を第1選択として取り組んでいます。

僧帽弁01僧帽弁02

心拍動下冠動脈 バイパス術

心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)は狭心症に対する手術術式です。これまで、人工心肺装置を用いて行うことが一般的であった冠動脈バイパス術(CABG)を、人工心肺装置を用いずに行う術式です。

CABG05

人工心肺を用いない利点は体への負担が少ない点です。人工心肺装置をつなげるには大動脈に穴を空けたり、多量の抗凝固薬(血液をサラサラにする薬剤)を投与する必要があります。また、人工心肺装置を使用する術式では、殆どの場合、心臓を一時停止させ、手術完了後に再拍動させるという過程が必要となるため、心筋へのダメージも大きくなります。

一方、心拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB)は心臓を止めずにバイパス手術を行うため、手術難易度は高いですが、手術を受ける患者さんの負担は減少します。

当科では、手術経験豊富なスタッフが手術を担当し、良好な成績を残してきております。

下肢静脈瘤

静脈瘤外来 水曜日

下肢静脈瘤は我々、心臓血管外科において最も頻度の多い疾患です。年齢分布は幅広くその頻度は全人口の10%という統計もありますが、静脈瘤の程度により様々なので実際にはもう少し多いと推定されます。

まず最初に重要な事は、下肢静脈瘤は生死に関わる疾患ではありません。必ず 手術をしないといけない疾患ではなく、一生うまく付き合っていくことも可能です。以下のような症状をお持ちの方は御気軽に外来(月曜日:静脈瘤専門外来)にいらしてください。外来にて検査を施行し患者さまと相談し、治療方針を検討します。

下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤の症状

下肢の表面が膨れていて
上記の症状がある場合、外来にて御相談下さい。

下肢静脈瘤の原因

下肢静脈瘤の原因長時間の立ち仕事、妊娠をきっかけとして下肢の静脈の弁が傷んでしまうことが原因です。一旦拡張すると元に戻ることはありません。

治療方法

『弾性ストッキング』『外科治療』を選択します。

『外科治療』
ラジオ波による血管内治療
ラジオ波による血管内治療当院では2015年よりラジオ波機器を用いて治療を施行しています。創部としては膝部に一箇所切開を行い、また下腿に静脈瘤がある場合は同時に瘤を切除しています。
外来にて詳しい方法を説明を行います。
抜去切除術(ストリッピング手術)
抜去切除術(ストリッピング手術)外科手術の方法の一つです。
瘤化した静脈瘤を抜去します。創部は1cm程度の創部が数カ所できます。(鼠径部,下腿)
硬化療法
静脈瘤の箇所が限局している患者さまにはその静脈に対して硬化療法を行います。拡張した血管に硬化剤を少量注射して静脈瘤の血流を途絶えさせる方法です。

  ラジオ波による血管内治療 抜去切除術 硬化療法
長所 創部が少ない
手術時間が短い
再発が少ない 局所的治療
短所 再疎通の可能性がある
血栓形成の可能性
全身麻酔が必要 治療できる病変が限定される
『弾性ストッキング』

下肢静脈瘤の症状は血管が拡張することによる症状です。下肢の血管の拡張を改善するのにストッキングを履いて下肢を圧迫して症状を軽減させます。体に対する 侵襲なく非常に効果があります。外来に来られた患者さまにおいて早急に手術が必要な場合以外はこの方法を勧めています。

検査

『血管エコー』

血管エコー外来では侵襲の無い血管エコー検査を行います。
静脈瘤の診断では 10 分程度です。手術が決定した場合には30分程度要して診断を行います。

 

『造影CT』

造影CT静脈瘤形態が複雑な事が予想される患者様においては右のように造影CTを行う事があります。造影剤使用、放射線検査になるので患者様皆様に行うわけではありません。

 

患者さまへ

『なんとも無いと思っていたからそのままにしていた』
『新聞を見ていたら、静脈瘤は怖い病気だと書いてあった』
『絶対手術しないとダメですか?』
『20年前くらいからあったけど、なんとも無いから様子みていた』
『血管が浮き出ていて、これまで温泉に入れなかった』

など、下肢静脈瘤をお持ちの患者さまから相談を受けます。
ホームページ上に記載できる情報量は限られております。
下肢静脈瘤にてお悩みの方は一度、下肢静脈瘤外来受診して下さい。