第52回日本脈管学会総会
岐阜
2011年10月20日(木)~22日(土)
2011.10.20
一般演題
- 『腹部大動脈瘤手術既往のある症例に発症した急性大動脈解離の検討』
伊藤寿朗 - 『早期血栓閉塞型Stanford A型急性大動脈解離に緊急手術は必要か?』
宇塚武司
2011.10.20
2011.10.09
2011.10.01
札幌医科大学医学部第二外科 田淵 正樹
今回ポルトガルのリスボンで開催された25th EACTS Annual Meetingにおける渡辺准教授および川原田准教授の発表同行の機会を得たので概要をご報告いたします。
札幌は秋の気配に包まれ、肌寒く上着が必要なほどでしたが、リスボンは日中30℃を超えるの暑さでした。
学会会場はテージョ川の畔にあり、近くにはベレンの塔など歴史的建造物もあり、学会と観光が両立した場所でした(写真1,2)。
会場は沢山の参加者で溢れていましたが、日本人と思しき東洋人はまばらでした。その中で2つの演題を出した札幌医大のすごさを感じました。発表は川原田准教授が「Selective Perfusion of Intercostal Arteries for Preoperative Detection of The Artery of Adamkiewicz during Repair of Descending and Thoraco-Abdominal Aortic Aneurysm」、渡辺准教授が「Thoracoscopic bi-segmentectomy with vessel sealing system」でした(写真3,4)。全国学会では前日でも飲んでいる先生方も、発表前は真剣そのもので、発表もさることながら質疑応答にも英語でこなす姿に、普段はどこにでもいるおじさんたちに見えますが、会場では尊敬すべき上司として強く印象に残りました。
今回の学会において私自身が強く感じたものは英語の必要性でした。もともと英語に対して苦手意識が強いこともありますが、会場でスライドを見ながら英語を聞いている間はなんとなく話が分かっていても、質疑応答になるとまったく会話の内容がつかめないありさまでした。頭では分かっていても、「英語は話せて当たり前」」という現実を実感してショックを受けました。
今回、国際学会に参加し自信になったことと致しましては、手術手技や個々の症例に対する治療戦略においては、日本の方が丁寧に行われているように感じました。弁膜症では、TAVIの発表が大半を占め、僧帽弁においても形成後の再手術症例に血管内治療の試みが始まっていました(Valve in ring)。大血管領域においても、血管内治療であるステントグラフトを利用したHybrid治療が中心となっており、Debranch TEVAR症例の発表も多数ありました。冠動脈領域では、バイパスグラフトとなるITAのskeletonizeやOPCABに関して、海外ではそれほど普及していないということに驚くとともに、丁寧さや器用さが必要な術式こそ、日本人が得意とする分野なのだと感じました。
学会の発表内容から、これから心臓血管外科の治療は、血管内治療の割合が大きくなっていくと感じました。今後のdeviceの改善により、適応が急速に広がっていくと思われますが、長期成績や医療保険制度の限界などを考えると将来的には後期高齢者や経済的弱者に血管内治療が選択され、早期高齢者や経済的に恵まれたものが従来手術を受けるような時代が来るのではないかと考えます。そのためにも、私たちができることは、血管内治療との共存に加え、従来手術の成績向上や低侵襲化が今後の心臓血管外科の在り方のように思いました。
最後に、過去のEACTS参加においてもトラブルはいろいろあったと聞いておりましたが、今回は飛行機のトラブルに苦しめられました。まず、最初は羽田発ロンドン行のJALがエンジントラブルのため、ロシア上空から羽田へ引き返し、代替え機で再び出発。そして無事にロンドンに到着するも、リスボンへ向かう乗継ができずに、ロンドンに一泊。翌日はポルトガル航空リスボン行が6時間遅れ。目的地リスボンに到着したのは、札幌を出て36時間後でした。さらに帰国時にもポルトガル航空が遅延してロンドン発羽田行のJALの乗継が絶望的な状況でしたが、JALが我々の到着を待ってくれたため無事に搭乗できました。しかし、荷物は間に合わず・・・。トラブルに対する対処や接客マナーを上げても、ポルトガル航空のいい加減さに比べ、日本の航空会社の丁寧で迅速な対応に感心しました。そして、この国民性は医療サービスにも発揮されていると思うと、「日本は素晴らしい!!!」と愛国心が芽生えたのでした。
最後にこのような貴重な機会を下さった樋上教授および渡辺准教授、川原田准教授に心より感謝申し上げます。
いつの日か自分がEACTSの発表の舞台に立てる日を夢見て、まずはラジオ英会話から・・・。
EACTS会場前 【1】
テージョ川の畔 【2】
美しいポルトガルの街並み
共和国樹立記念日の騎馬隊パレード
2011.07.14
2011.06.16
2011.06.10
2011.05.26
これまでに国際学会に参加したことはありませんでした。先生方の留学や国際学会でのお話は伺っていましたが、ぜひ私も国際学会に参加して海外の胸部外科の雰囲気を味わってみたいと思っていました。
昨年末に「何か私でも参加できそうな国際学会はないかな。」と調べてみて、アジア心臓血管外科学会が5月にあることを知り、演題を出してみることにしました。
初めてのことばかりで、まずはpre-registrationという制度があることさえ知らず、こんなに高い参加費が必要なのか、と驚きました(国際学会では標準的な参加費とのことでした)。演題はoral sessionに挑戦したかったのですが、poster sessionとなりました。 学会が近づくにつれて、簡単な英語の履歴書を提出したり、posterを作ったりと少しずつ気分が盛り上がっていきました。 posterも今まではpower pointで数枚に分けて作っていましたが、今回はA0の大きさでデザイン作成し、布版に印刷して持っていくことにしました。poster sessionのため、口頭演術はなかったのですが自分で作った読み原稿を留学から戻ってきたばかりの宇塚先生や宮島先生に見ていただいたり、出来上がったposterを前にして、現在精神科に留学中のDr. Tedにプレゼンテーションの指導をしていただいたりといろいろな人にお世話になりました。
今回のアジア心臓血管外科学会はタイのプーケット(Phuket)で開催されました。プーケットはバンコクから飛行機で南に1時間20分のところに位置するタイ最大の島です。「アンダマン海の真珠」と称され、白い砂浜、美しい珊瑚礁が印象的なアジアを代表するリゾート地です。
今回は、私のco-responding otherである村木先生と、同じくposter sessionに参加する中島先生の3人で参加しました。
5月25日、朝始発の飛行機で札幌から出発。タイのバンコクを経由してプーケットに到着したのは夜8時ころでした(日本とは2時間の時差があります)。到着すると、とても蒸し暑く、一気に南国気分となりました。私は宮崎県の出身で暑くて湿気の多い環境には慣れているはずなのですが、それを遥かに上回る暑さと湿気でした。
学会会場でもあるHilton Hotelに到着し、3人で遅い夜ご飯を食べようとホテルの外に出て数分歩きましたが、それだけでサウナに入ったかのごとく全身汗びっしょりとなりました。明るかったら海が見えるであろう海岸沿いのレストランで早速トムヤンクン、ヤムウンセン、タイカレーを食べました。屋外のため、トカゲがあちこちに出没し、落ち着かないまま初日の晩ご飯を済ませました。
翌日、朝8時30分からpost-graduate seminorに参加しました。会場でregistrationを済ませると、学会提供のバッグをもらいました。バッグの中には分厚いプログラムと折り畳み傘がはいっていました(この傘はのちにとても重宝しました)。この重いbagを持ってseminorの会場案内に従い歩いていきましたが、会場がhotel敷地の外にあり、ものすごく暑いなか会場につくと、すでに全身汗でびっしょりでした。ほんの数分外を歩いただけで汗だくになり、これから先が思いやられました。
post-graduate seminorでは「開心術の再手術について」というテーマで冠動脈バイパス術、大動脈起部置換術、先天性心疾患についての発表がありました。米国、ヨーロッパ、アジア各国から有名な先生が講演してくださいましたが、英語圏以外の先生でもとても流暢に英語で講演していらっしゃいました。私はまだ英語をきちんと聞き取れないため話の内容が分からないこともありましたが、スライドを見ながら何となく理解することができました。札幌医大では最近、再手術、再々手術の症例が増えてきているのですが、日本以外でも同じことに悩み、模索していることが分かりました。また、死亡率が高く驚きました。
丸一日post-graduate seminorで勉強したあと、3人でプーケットの町に繰り出しました。プーケット中心部へトゥクトゥクに乗って、ガイドブックを片手に地元の人が通うというレストラン?(むしろ屋台)に行きました。まず、トゥクトゥクですが小さなトラックの荷台に屋根をつけた乗り物です。プーケットの運転手さんは非常にスピードを出すため、手すりにつかまって落ちないように必死でしたが、気持ちよい風が吹いてまあまあ快適でした。レストランでは昨夜同様、トムヤンクン、ヤムウンセン、タイカレーを食べました。味は地元ならではなのか、日本人の私には若干慣れない感じでした。その後、ムエタイを見ました。ムエタイ見物も初めてでした。中学生くらいの男の子(筋肉もりもりでした)から大人までが独特の儀式の後に試合をするのですが、その儀式が非常に印象深いものでした。
3日目はポスター発表の日でした。朝8時30分から自分のポスターの前で「誰か質問してこないかな」と緊張しながらうろうろしていました。数人の方が私のポスターに興味を示してくれましたが、質問はありませんでした。少し残念でしたが、自分のポスターの前で写真をたくさん取りました。この日は以前一緒に働いていた先生たちのoral sessionがあり、その発表も聞きに行きました。流暢な英語の発表で海外の先生による質問にも英語で的確に回答しており、私も負けられないな、と思いました。
4日目は3人でピピ島ツアーに参加しました。ハリウッドの映画にも出てくるとても有名な島です。道中の船は波が高いうえにものすごくスピードを出すため、海へほおり出されるのではないかというくらい揺れました。島の近くでは船を浮かべて水中ダイビングをしました。海はとても透き通っており、色とりどりの熱帯魚がたくさん泳いでいました。しばし熱帯魚とともに海に浮かんでいました。その後ピピ島へ行きました。入り江に囲まれており、エメラルドグリーンと濃いグリーンの2層にわかれた海の湾が特徴です。映画のシーンさながらの光景で(観光客はたくさんいたのですが)、青い空もあいまってまるで別世界という感じでした。普段の私たちの生活とは全く違う時間の流れと景色でうっとりしました。
今回の学会は、正直勉強へ行ったというよりは国際学会の雰囲気を体験し、やや観光も混ざっていたという感じです。
しかし、世界各国の胸部外科医の集まりに一員として参加でき、とてもうれしかったです。次回はヨーロッパやアメリカのもっと規模の大きい学会にoral sessionで参加したいです。
帰りの飛行機では留学や国際学会といった夢がほんの少しですが近づいたような気がして、病院に戻ったらまた日々がんばろうと思いました。
とても良い経験をさせていただきありがとうございました。
上原麻由子
2011.05.12