急性大動脈解離は血管内膜に亀裂が生じ、そこから血液が流入することで、大動脈が真腔(もとの血管腔)と偽腔(新たに血管が裂けてできた腔)に裂ける病気です。高血圧や動脈硬化などが原因のほか、生まれつき血管の壁が弱い方に発症する場合があります。突然発症し、適切な治療が行われなければ死にいたる非常に重篤な病気です。
発症時、血管が裂けるときに激烈な痛みを伴います。それは突然出現し、血管が裂ける範囲によって、胸痛、背部痛、腹痛、腰痛という形で現れます。血管が解離(裂ける)することによって薄くなってしまった血管が破裂すると、出血性ショックを起こしたり、心タンポナーデ(心臓の周りに液体、この場合血液がたまり心臓が動けなくなってしまう状態)を起こし血圧が低下し死に至ります。解離した血管は血液が正常に流れなくなりますから、十分な血液が流れなくなった臓器の虚血症状も現れます。例えば、頭部への血管に解離が及べば、意識消失発作を起こし、脳神経外科の救急病院へ搬送されるケースも稀ではありません。
急性大動脈解離は上行大動脈(心臓から出た部分の大動脈)に解離が及ぶスタンフォードA型と、解離が及ばないスタンフォードB型に分類されます。
スタンフォードA型では30%を越える症例が心肺停止状態で救命センターに運び込まれてきます。また、発症から48時間以内に50%の患者さんが死亡するといわれています。これは、スタンフォードA型の方が破裂、心タンポナーデを起こす危険が非常に高いからです。
急性大動脈解離は発症後48時間以内の死亡率が非常に高いため、発症後なるべく早く診断し、治療を開始することが重要です。治療法はスタンフォードA型とスタンフォードB型では異なります。
<スタンフォードA型の治療>
降圧療法など内科治療の成績が悪いため、診断がつき次第、緊急手術を行う必要があります。
手術は解離した血管を人工血管にかえる‘人工血管置換術’を行います。しかし、大動脈が全長にわたって解離している場合、解離した全ての血管を人工血管に変えることは患者さんへの負担が大きくて不可能です。基本的には上行大動脈から弓部大動脈の範囲を置換します。(写真は上行・弓部大動脈を人工血管に置換した写真です。)これによって、急性期の死亡の原因である心タンポナーデや破裂の危険を減らすことができます。
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(右) 上行・弓部大動脈を人工血管に置換した写真。
<スタンフォードB型の治療>
厳重な降圧療法を行うのが一般的です。入院期間は4週間程度で、最初の1〜2週は絶対安静となります。血圧を下げ、解離して薄く弱くなってしまった血管が、破裂しない程度に強くなってくるのを待つのが目的です。ただし、治療中に解離が上行大動脈に進行したり、破裂や臓器虚血が認められた場合は緊急手術を行う必要があります。
1990年から昨年まで220例以上の急性A型大動脈解離の手術を行い、手術を行うことができずに死亡した症例を除くと病院死亡率は15%でした。
退院後も引き続き血圧のコントロールは重要です。解離した血管は時間とともに拡大し大動脈瘤に進展する場合がありますので、定期的にCT検査を行って大動脈の直径が拡大していないか検査する必要があります。







